名を上げるか名を残すか

日本から大切なお客さんが

来てくれました。

スズキさんとは

僕がもう2年以上かな?の付き合いになるけど

毎年遠く日本から試合を観に

来てくれます。

僕がタイで在籍した

全チームでのプレーを観てくれている

数少ない日本のファンの方です。

お客さんと言いましたが

お客さんというとのは

あまり好きではありません。

なぜなら

スズキさんとは顔も合わせるし

連絡も取り合うので

少し他人行儀な

 ”お客さん”には

かなり距離感があるからです。

サポーターか?ファンか?

というとこれもイマイチ

距離感があって実は嫌なんです。

僕たち選手にとって

結果に関係なく

いつも応援し励ましてくれる方というのは

本当に奇跡のような存在です。

『おいおい。今日はゴマするね~下地』

いや違います。

今日は本音です。笑

僕たち選手というのは

その年の結果の良し悪しで

さらに運も絡んで

契約を

切られたり

結んだり

その試合の良し悪しで

持ち上げられたり

叩かれたりします。

華やかな世界でありながら

その移り変わりは激しく

みんなに忘れ去られてしまう寂しさや

居場所を失うこわさは選手の中にあるのではないでしょうか。

すくなくとも

僕の中にはあります。

試合に出なければ不安になり

出てれば出てるで不安になるのは

どんなに光を浴びていても

自分が取り替え可能な存在であるという

現実を知っているからです。

でも

そこを乗り越えていくことは

僕たちがしたい大きな仕事の

第一歩だと思います。

話は少しずれますが

後期から

元リバプールでヨーロッパチャンピオンメンバーの経歴を持つ

シナマ・ポンゴルがチームに加わりました。

彼が先日の試合前に

一言みんなに話してくれました。

ちなみにその日の相手は

クラブ創設以来一度も勝ったことのない

タイリーグの強豪でした。

「選手にとっての幸せは、ここに観に来ている人たちに

『お前はあのときここにいた』って名前を覚えていてもらうことだ」

「おれたちは今は弱いかもしれないけど

今日の後、みんながおれたちの名前をずっと覚えてくれる。そういう試合にしよう。」

『すごいな。』

感動しました。

テンション上がりました。

彼は僕の一つ上の32歳。

若くしてヨーロッパチャンピオンの座に輝いてからは

怪我や不運で紆余曲折を経て

今年タイにきました。

ここチャイナートまで来た彼の人生や

いろんな超一流選手たちと過ごしてきた時間や

ロッカールームで培ってきた経験が

彼にそういう言葉の重みを持たせたんだと思います。

『きっとジェラードも同じような言葉を

あのチャンピオンズリーグの

決勝のロッカールームで言っていたんだ』と

僕は勝手に少年の心に戻っていました。

その試合

後半ロスタイムのフリーキックで

4-4の同点に追いつくという

劇的な展開とスコアで

クラブ史に残るゲームと結果を残しました。

内容はどうだったのか

僕はわかりません。

だけど

シーズン最多?観客数を記録したその日。

引き分けながらも雨の中でお客さんたちは

最後まで大歓声で見送ってくれました。

・・・

1週間空けて

前節は最下位のチームとの試合。

強豪との好ゲームの流れを受けて

勝てば降格圏脱出という中で

僕たちは負けました。

ちょうどその日

スズキさんが観にきてくれたのですが

残念ながら

結果で喜んでもらうことができませんでした。

・・・・

思い返せば

今まで僕がプレーしてきたクラブは

トス

ルケーニョ

リネンセ

アギアネグラ

BECテロ

ポリス・ユナイテッド

そして

チャイナート

どれも小さな町のクラブで

とてもお客さんとの距離が近くて

すぐ顔なじみになりました。

『あっ名前わかんないけど

いつも来てくれてるな』

『あれ、あのおじさん今日来てないな。』

っていう感じで

お互いを感じられる距離感がある

いいクラブばかりです。

僕はビッグクラブでプレーしたことがないので

なんとも言えませんが

小さいクラブだからこそ

『この人たちの生活の一部になっているんだ』とか

『自分のプレーや結果が

この人たちの生活に喜びとか

感動を加えることができるんだ』

と言う実感が

僕に力をくれます。

そうやって頑張る僕を

彼らはいつも覚えてくれました。

これもリップサービスでなく

本音です。

『サポーターはクラブを変えられない。』

これは

よくクラブが低迷期に陥ったときに聞かれる言葉です。

だけど同時に

『選手はクラブに残れない』

という選手側の現実もそこにはあります。

だからなんなのか。

選手はクラブを踏み台にして名を上げる・・・じゃなくて

そこにいる人たちの記憶に名を残す。

そのクラブに名を残す。

『あいつは確かにここにいてくれたな』

そうやって言ってもらえる存在になれるのか

日々自分と向き合っていこうと思います。

そして

プレーの良し悪しに関わらず

残り7試合

そして

いつまでできるかわからないけど

選手人生が終わる日まで

”下地 奨”の名前をかけて

ボールを蹴っていきたいと思います。

スズキさん

毎年、いつもありがとうございます。

そして

今まで出会った奇跡のみなさんに感謝。

今日も最後まで

観てくれてありがとうございました。

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