貪欲は正義で
謙虚は悪です。
『また変なこと言ってるぜShimoji』と
野次が聞こえてきそうです。
逆に
『ふむふむ。面白そうなこと言ってるぞ』と興味を持ってくれた方も
いつもありがとうございます。
こんにちは。Shimojiです。
今まで僕は
『貪欲は悪で、欲しがったり、より多くを求めることは恥ずべきこと。
自分だけがほしいものを得るのは悪いこと。』
そんな価値観を持って生きてきました。
もしかしたらあなたもそういう考えがあるかもしれません。
あるいは『出る杭は打たれる』というイメージが
突き抜けたいという僕たちの感情や行動を抑えたりすることもあります。
だからなるべく目立たずうまくやろう。
そんな感じもあるかもしれません。
僕は日本でプレーしているとき
謙虚でした。笑
例えば試合でいいプレーをして褒められたら
『周りのみんなが素晴らしいプレーをしてくれたおかげです。』
とか
『僕はたいしたことないです』
とか。
そういう謙虚でいい奴を装っていました。
装っていたというのは
本心では
『おれ今日すごかったな~』と思っているのに
自分を褒めたり、調子に乗ったりすることで
『周りからなんて思われるかな。』と周りの目が怖かったので
自分を出せなかったり目立つことに恐怖すら感じていました。
調子に乗るのが怖くて素直に喜べず
悪かったところや上手くいかないところばかりを取り上げて
『全然だめだ』と
ストイックで自分に厳しくすることが大事だと思っていました。
でも実際は本心で『みんなのおかげ』なんて思っていない
感謝の欠片もない奴でした。
それは謙虚でいることが美徳で
『成功するための姿勢は謙虚であることだ』
と思っていたし、
今思えば
それだけ自分を大事にできる自信もなかったからです。
そのくせ
試合で活躍する選手を羨ましく思い
自分を大事にして結果を出すヒーローたちに嫉妬し
『あいつらばっかり・・・』
と思っていました。
そして、そんな自分が嫌いでした。
本当はヒーローになりたい!
点も決めたい。最高のパフォーマンスをしたい!
そう思っているのに
『おれはたいしたことないです』と言っては
『黒子役もチームには必要でしょ』と自分に言い訳をし
自分を押さえ込む自分。
そんな自分をずっと変えたいと思っていました。
今日はそんなビビって踏み出せなかったShimojiを変えた
ブラジルでのある出会いのお話。
僕が自分のサッカー人生を生きようと
思うきっかけになったある選手のお話です。
彼の名前はJoan(ジョアン)
僕がサンパウロのチームと契約したちょうど同じ日に来た
FWの選手です。
彼は
「ゴール前で必ずおれによこせ!」的な
生粋の点取り屋でした。
その集中力と闘志はすごかったです。
さらに相手をかわす個人技のテクニックと
ポジショニング、
なによりも決定力が抜群でした。
長身で体格もよく
髪はドレッド。
いやでも目立つ彼の風貌と
毎試合のごとく得点を重ね
チームを勝利に導くその姿にファンは熱狂していました。
逆にチームメイトはというと
嫉妬・妬みそして彼の周りの選手への要求だったり
貪欲な姿勢を嫌っていました。
『もっと周りのためにやってほしい』
『あいつばっかり』
『自分のことだけしか考えていない』
・・・
そんな彼への批判が日に日に増えていきました。
でも僕は彼のプレーが好きでした。
彼のプレーを初めて見たときなぜか惹き込まれて
僕は感動していました。
『かっこいいな』という思いと
少しの妬みを含んだ
おれにはああいうふうになれないかな
と思わせる憧れの存在。
活躍を続けていく彼は次第にチーム内で浮いた存在となり
普段も1人でいる時間が多くなりました。
幸い僕が外国人だったこともあって
彼は僕によくしてくれました。
僕の彼に対する尊敬とか憧れの気持ちを
彼も感じていたようで
僕にはいろいろ話をしてくれました。
いつも笑顔で接してくれる彼に
『なんて強い奴なんだろう』
と思っていました。
僕もそうですが
多勢の側にいた方が
安心するのが人の心です。
そして
『少数派になる勇気がないから自分が突き抜けられない』
ということも理解していました。
だからこそ
『どうして彼はこんなに強いんだろう。』と疑問でした。
ある日練習の休憩中にふと
彼が以前所属しプレーしていたポルトガルのチームでの話をしてくれたとき
『おれはたいした選手じゃなかったんだ』と言ったのを聞いて僕は彼の違う一面を見ました。
『前はただプレーするだけで何もできなかった。
おれはずっと変わりたかったんだ。
だから点を取ることだけを考えてプレーするようになった』
と彼は言っていました。
僕は彼が昔からずっと点取り屋で
凄いプレーヤーだったんだと思っていたので
正直驚きました。
人が変わるのは難しいです。
どうしても今の自分のままでいたいのです。
それは良くも悪くも。
変わりたいと思ってもなかなか変われない。
ほとんどの人がそうです。
でも実際に変わった人、
今ままでの自分を乗り越えた人を目の当たりにしたとき
『自分も変わりたい』
と強く思いそこから少しずつ人生は変わっていくものだと思います。
僕はJoanに会えてラッキーでした。
そして自分もこういう人になりたいと思いました。
彼が本気でなりたいと思う理想の自分や
手に入れたい人生を本気で掴みに行っている姿が
彼の
【人を惹きつけ魅了するプレー】だったり
【ゴールに迫る迫力】にあらわれていたんです。
彼は周りが思うほど強くはないし意外と臆病で繊細でした。
孤独とも戦っていたのだと思います。
『やっぱり自分にはできないんじゃないか。』
『結果が出なかったら・・・』
そんな不安の中で
それでも自分は変わりたい。点を取りたい。
自分のサッカーをしたい。
その彼の心が情熱的で芸術的なプレーとゴールを産んでいたんだと思います。
彼はチーム内では孤独だったかもしれません。
だけど
彼のプレーでチームは救われたし
そこでプレーしている選手の家族も喜んでいました。
一緒に働いているスタッフはもちろん
チームが勝つことでサポーターやファンは幸せでした。
もちろん彼は子供たちのヒーローだったし
彼のひとつひとつのゴールが
たくさんの人の笑顔と幸せを作っていました。
それを見て
『僕がなりたかったサッカー選手はこうだよな・・・』
って彼は僕の夢を思い出させてくれました。
そう。
彼の貪欲さがより多くの人のためになり
より多くの人の幸せを作る。
貪欲=正義です。
貪欲であることは
自分に正直になることだと思います。
それは今までの古い考え方や価値観を壊して
新しいものの見方をしていく作業なので
苦しく大変です。
だけど、より良くなろうとしたり
自分の可能性にチャレンジする姿勢こそ
が『謙虚』で、
逆に
「自分はたいしたことないです」と謙虚を装うのは
現状に甘んじて先に進まない言い訳を言っている
『怠け者』なんだ
と彼のプレーや生き方は教えてくれました。
僕はそれから
本当にしたいプレーとか
どんなプレーヤーになりたいかを考えるようになって
少しずつJoanのように
自分のサッカーや人生を生きようと覚悟を持って
プレーすることができるようになってきました。
そうすると不思議なもので
本心から周りの選手に感謝できることも増えました。
*もちろん僕は神様でも聖人でもないので
いつもというわけではありませんが・・・
(Joan 2011年11月)
昨日はリーグ戦14節でした。2ゴール。
一つでも多くのゴールと勝ちを求める気持ちが
自分を幸せにして
さらにひとりでも多くの人を喜ばせられるなら
僕は貪欲という『謙虚』な姿勢で有り続けたいと思います。
今日もあなたの貴重な時間を使って
最後までみてくれてありがとうございました。
Shimo